MNPの敷居が下がるかも?「キャリアメールの持ち運び」サービスの詳細。
総務省主導で携帯電話の料金やサービス内容に関してあれこれ圧力、もとい、改善の要請が継続して行なわれています。価格の圧縮要請でahamoやpovoといったサービス内容の集中と選択を行なうことで格安と言える料金を実現したプランが生まれたりしています。
「キャリアメールの持ち運び」もその要請の一環です。携帯電話キャリアを乗り換えた際に以前使っていたメールアドレスを継続利用出来ないことが、キャリア乗り換えの足かせとなっている、と総務省が判断したことからこのサービスが生まれました。
この記事では具体的に「キャリアメールの持ち運び」サービスの中身を確認していきます。
そもそも「キャリアメールの持ち運び」とはなんぞや
従来の携帯電話のプランには自動的に「キャリアメール」と呼ばれるメール機能が付いてきました。ドコモであれば***@docomo.ne.jp、auであれば***@au.com、ソフトバンクなら***@i.softbank.jpというようなアドレスのメール機能が何もせずとも利用出来るサービスですね。当然オプション料金などもいりません。
元々は携帯電話専用の、かなり独自色が強いメールサービスでしたが、今は内部で使われる技術なども一般的なインターネットメールと共通化が進んでいます。
このキャリアメール、完全に携帯電話プランのサービスに統合される形になっていました。その関係でNMPなどで携帯電話の契約先の会社を乗り換えると、それまでの携帯電話で使っていたメールアドレスは利用出来なくなってしまうのが普通でした。
これ、IT関連の知識を持つ人でも場合によっては結構面倒な影響が出ます。ネットサービスのアカウントのIDに使うメールアドレスをキャリアメールのものにしてしまったり、連絡先をキャリアメールで登録した場合など、携帯電話回線乗り換えの前後にそれなりの作業が発生します。
これが携帯電話キャリアの乗り換えを阻害する要因の一つになっている、というのもあながち大きな間違いではないかもしれません。結構面倒ですからね、変更作業は。
こういった不都合に対応するために作られたシステムが「キャリアメールの持ち運び」です。例えばドコモからauに乗り換えたときに、乗り換え後も以前使っていたドコモのメールアカウントを利用し続けられるようにする仕組みですね。
一部のインターネットプロバイダが提供している、メールだけ利用出来るアカウントのようなものと考えると良いでしょうか。それを3大キャリアが提供してくれます。
もちろん有料のサービスとなります。
キャリアメールを持ち運ぶメリット
キャリアを乗り換えた後も、乗り換え前のキャリアのメールを利用し続けられることのメリットをリストにすると以下のようになるでしょうか。
- 連絡先として登録したキャリアメールの再設定が不要
- IDに使っている場合には、アカウント設定の変更が不要
- キャリアメールで連絡を取り合っていた相手に対応してもらわなくて良い
取りあえず、携帯電話キャリアを変更しても、追加で何らかの設定変更等々を行なう必要がなくなると考えていいでしょう。
ユーザーの各種サービスの使い方次第ではありますが、人によっては節約可能な手数は案外大きいと思いますよ。
3大キャリアのキャリアメール持ち運びの内容
次に具体的にキャリアメール持ち運びに対応済みの3キャリアのサービス内容を確認してみます。
ドコモ
まずはドコモから。
- 申込場所:ドコモショップ、ドコモの公式サイト
- タイミング:ドコモ回線解約後31日以内
- 料金:月額330円(税込み)
従来のドコモのプランからahamoへの乗り換えの際にもこのオプションを付加できます。ただし、ahamoへの移行の場合には、移行の手続きと一緒に申し込まないといけません。
au
続いてau。
- 申込場所:公式サイト
- タイミング:au回線解約後31日以内
- 料金:月額330円(税込み)
auの場合、引き継げるメールアドレスに制限があり、~@ezweb.ne.jp、~@au.com以外のアドレスは持ち運びサービスの対象外となります。
ソフトバンク
最後にソフトバンクです。
- 申込場所:公式サイト
- タイミング:ソフトバンク回線解約後31日以内
- 料金:年額3,300円(税込み)
料金は月額対応も可能になる予定があるようです。
引き継げるメールサービスはS!メール、Eメールとも対応しますが、対応可能なメールアドレスはきちんと公式サイト等で確認しておいた方が良いでしょう。
ちなみに現時点では楽天モバイルはこのサービスに対応していないようです。
他社携帯で持ち運んだキャリアメールにアクセスする方法
今まで普通にキャリアメールを使うときには、ドコモならば販売店で扱われているドコモの専用端末にプリインストールされている、キャリアメール専用のメールアプリを利用していたと思います。
こういったキャリア専用のメールアプリは当然ではありますが、キャリアを変更後にはそもそもインストールすることすら出来なくなります。では、他のキャリアのキャリアメールシステムを利用するにはどうしたらいいのでしょう??
実はこのあたりでは、キャリアメールのシステムがインターネット標準のシステムに切り替わっていることが上手に働いてくれています。今のキャリアメールは「IMAP」という仕組みで動作しています。
IMAPではメール本体はサーバー側に保管されていて端末側ははそれを参照する、「クラウドベース」の動作を基本としています。
IMAPの仕組みを利用出来るメールソフトなら基本的にはどれでもキャリアメールを利用出来るはずなのです。そして今のメールソフトのほとんどはPOP3方式のほかIMAP方式にも対応します。
キャリアメール持ち運びの申し込みを行なったときにキャリア側からメールシステムにアクセスするための情報を渡されますから、この情報を使って適当なメールソフトをセットアップ。あとは普通に以前使っていたキャリアメールにそのままアクセスできるはずです。
ahamoでもキャリアメールが使える!
上でも少し触れましたが、ドコモでは従来のドコモのプランから低価格で利用出来る新しいプランのahamoへの乗り換えの際も、キャリアメール持ち運びのサービスの対象になります。
このため従来は不可能だったahamoのプランでドコモのキャリアメールを利用する、という回線の使い方が部分的に可能になっています。
ahamoの仕組みを理解した上で活用するようなタイプのユーザーが単独で積極的にキャリアメールを利用するシーンはあまり想像できませんが、連絡を取り合う相手の方の都合によりキャリアメールが必須となるケースは考えられますね。
キャリアメールのシステムは設定を変更することでインターネットからのメールを受信可能ですが、迷惑メールを抑制するためにインターネットからのメールはすべてシャットアウトしているユーザーもいます。
確かデフォルト状態はインターネットからのメールは受信しない設定になっていたはずです。
その状態だと例えばGmailからキャリアメール側に送ったメールはエラーリターンもせずにブロックされるので、お互いにメールが届かなかった状態に気づけない状態に陥ります。
こういったユーザーとメールで連絡を取り合うためにはキャリアメールが必須となるかもしれません。
とりあえず有償オプション的に利用出来る機能として準備されているのは、利用の可能性を広げられるという意味でありがたい設定だと思います。