低速モードというと、ネットの容量を使い切ったあとに極端に通信速度が低下するものです。動画観賞などに支障をきたすため、あまり良くないイメージを持っている人も多いでしょう。
ところが、MVNOの中にはこの低速モードにわざと切り替えて使用できるところもあるのです。上手につかえば通信量が減り、利用料金を抑えられる可能性があるのです。
低速モードとはどのようなものか
大手キャリアにしてもMVNOにしても、料金によって通信量の上限は決まっています。3GBコースならば3GB、20GBコースならば20GBが上限です。
では、この上限を超えてしまうとどうなるのでしょうか。実はネット接続そのものができなくなるわけではありません。極端に通信スピードが落ちてしまうのです。
ドコモを例に取ると、決められた容量を使い切ってしまった場合、ギガライトなら128kbps、ギガホなら1Mbpsに通信スピードが低下してしまうのです。
4G LTEの理論値が150Mbpsですから、ギガホでも150分の1、ギガライトならほぼ1000分の1にまで通信スピードが落ちてしまう計算になります。
スマホでストレスなくネットが使えるのは、4G LTEの高速通信スピードというバックボーンがあるからなのです。スピードが低下すると、ネットの使い勝手は悪くなります。
YouTubeで動画を鑑賞しようとしても、回線スピードが足りずにすぐ再生が止まってしまいます。はっきり言って、動画鑑賞どころではなくなってしまいます。
このため、大手キャリアで通信量がいっぱいになってしまった時には、追加料金を払って容量を購入し、通信スピードを高速なままにしておこうという人も多いのです。
低速モードに「わざと」切り替えられる
ただ、この低速モードにもちょっとしたメリットがあります。それは、いくら使っても通信容量を使わないので、お金がかからないということです。
このメリットを活用してもらおうと、MVNOの中には低速モードに「わざと」切り替えて使えるサービスを用意しているところがあります。
大手キャリアの場合、低速モードになるのは決められた容量を使い切ったときだけです。容量がまだ残っているのに、低速モードに切り替えて使うことはできません。
これに対して、切り替え機能を備えているMVNOの場合は、たとえ決められた通信容量をほとんど使ってなくても、低速モードに切り替えて使うことが可能になるのです。
通信スピードが速いことは、多くの局面で便利になります。ただ、実際には必ずしもネットの高速接続が必要ではないケースも存在しています。
たとえばSNSの場合、テキスト中心のやり取りをしているならば、通信速度は遅くても不便だと感じることはありません。テキストは送受信に必要とする容量が小さいためです。
こういうケースで低速モードに切り替えておけば、容量を無駄遣いしなくてすみます。使い方によっては容量の少ないコースに変更し、通信費を節約することも可能になのです。
大手キャリアにしてもMVNOにしても、容量が多いほど月々の料金は高くなります。低速モードを上手に利用して低容量コースに変更できれば、利用料を下げられるというわけですね。
「バースト転送」機能が付いているところも
ただ、普通にWebページを閲覧する場合でも、画像が多いと低速モードでは読み込みに時間がかかり、なかなか表示されないということも起きかねません。
低速でもネットにはつながっているので、最終的には表示されるのですが、それまでの待ち時間が長くてストレスになってしまうことは確かです。
こういう不便が起きにくくするために、MVNOの中には低速モードであっても、一時的に高速読み込みが可能になる「バーストモード」を設定しているところもあります。
Webページの表示に時間がかかるときは、最初の画像などの読み込みが原因となっています。つまり、この時だけ通信スピードがアップしていれば、ストレスはかなり低減されるというわけです。
例えば通信開始から100KBほどは高速読み込みが可能なバーストモードに設定していた場合、全部とはいかないかでもいくつかの画像はすんなり表示されるので、ストレスはかなり緩和されます。
これならば、低速モード中に外出先でWebサイトを閲覧しても、なかなか表示されなくてイライラするというようなことは減るのではないでしょうか。
もちろん、こうした便利な機能は大手キャリアにはありません。使用料金を抑えることに特化したMVNOならではの機能だと言っていいでしょう。
低速モードに切り替えられるMVNOは?
高速モードと低速モードの切り替えが自由に行える主なMVNOは、以下の通りです。
・楽天モバイル
・UQモバイル
・IIJmio
・mineo
・OCNモバイルONE
まず楽天モバイルですが、スーパーホーダイに加入していれば低速モードでも1Mbpsの通信速度が確保されます。加入していない場合は、200kbpsが上限となります。
同じ低速モードであっても、5倍もの通信スピードの差が出るのです。このためにスーパーホーダイの加入を検討してみるのも、ありなのではないでしょうか。
UQモバイルについても同様で、おしゃべりプランやぴったりプランに加入していれば300kbpsが上限、それ以外は200kbpsが上限です。ただ、楽天モバイルほどのスピード差はありません。
IIJmio、mineo、OCNモバイルONEについては、いずれも200kbpsが上限となります。楽天やUQよりは遅いですが、大手キャリアの低速モードである128kbpsよりは速いです。
ただ、IIJmioとOCNモバイルについては低速モードについても容量制限があります。この容量を超えてしまうと「超低速モード」になってしまうのです。
具体的には、IIJmioならば3日間で通信量が366MBを超えた場合、OCNは高速モードの基本通信量の半分を超えた場合、制限がかかる仕組みになっています。
低速モードよりさらに通信速度が遅くなっては、支障が大きくなります。低速モードであっても、使用量には注意しておかなければならないということになります。
また、いずれのMVNOバーストモードに対応しています。低速であっても、Webページの閲覧でストレスを感じるケースは減りそうです。
他にも、低速モードへの切り替えに対応しているMVNOはあります。申し込む前に、切り替えが可能かどうか聞いてみるのもいいかもしれませんね。
低速モードだと何ができるのか
実際には低速モードだと、実用的にできることは限られてきます。ただ、その限られたことを行うだけならば、低速モードも十分活用できるというわけです。
一例を挙げればLINEの場合、テキストのやり取りだけを行うならば容量は必要ありません。低速モードであっても、不便を感じることはあまりないでしょう。
逆に動画を送ったり、通話を行ったりする場合には、動画や音声といった大きなデータのやり取りを行うことになります。このため、低速モードだと支障が出てしまいます。
Twitterについても、似たようなことがいえます。文字だけでやり取りしている分には低速モードでも問題ありませんが、画像の送付や閲覧を行おうとするとスムーズにいきません。
また、メールは基本的にテキストだけのやり取りです。このため、低速モードであっても支障なく送受信を行うことができます。
逆に動画鑑賞や音声通話、オンラインゲームなどのように、通信量が多いものは低速モードだとかなりの支障が出ます。この場合は、高速モードに切り替えて使った方がいいでしょう。
繰り返しますが、日常生活でネットを使う場合、必ずしも高速接続は必要ないケースは意外と多いです。低速モードに切り替えられるなら切り替えて、容量を節約するのも賢い選択だといえます。