格安SIMは通話品質が悪いという風評がありますが、実際には使用している回線は大手キャリアのものなので、通話品質については大手キャリアとほぼ同レベルです。通話の途切れもありません。
ただし、IP電話を利用したかけ放題サービスなどは、電話回線ではなくインターネット回線を利用しているので、通信状況によっては品質が低下する可能性はあります。
一般的な通話は大手キャリアと同レベル
一般的な通話については、格安SIMだからといって品質が落ちるわけではありません。MVNOは大手キャリアの回線を借りて使っているため、通話品質もそれに準じた形となるからです。
もちろん、通話中に途切れることもありません。
MVNOは大手キャリアの回線を借りている
まず知っておいてほしいのは、MVNOは大手キャリアのように自前の回線を持っているわけではありません。大手キャリアの持っている回線を借りて運営しているのです。
自前の回線を持つとなると、全国に設備を設置しなければなりませんし、設備投資にはお金がかかります。大手キャリアの利用料金が高いのは、設備にお金がかかるのも理由のひとつです。
MVNOは運用にかかる費用を抑え、大手キャリアより格安な商品を提供するため、建設費や維持費が必要となる自前の設備は持っていません。
その代わり、設備を持っている大手キャリアにお金を払って回線を借りて、運用しているのです。結果としてその方が、固定費が小さくなる分、固定費が抑えられるからです。
厳密に言えば、MVNOの中には大手キャリアから直接回線を借りているところと、MVNEと呼ばれる仲介業者から「又貸し」してもらっているところがあります。
ただ、これは「どこから回線を借りているか」という形式だけの問題で、どちらのMVNOも大手キャリアの回線を利用していること自体に変わりはありません。
回線が同じだから通話品質も同じ
大手キャリアは、貸す回線だからといって、品質の悪いものを渡しているわけではありません。利用している設備が同じなのですから、回線の質も自社で利用しているものと同じです。
例えば、ドコモの回線を利用しているMVNOならば、ドコモ回線の利用可能エリアすべてをカバーしています。ドコモが届く地域で使えないということは、あり得ないのです。
同じことは、auやソフトバンクについても言えます。両社の利用可能エリアにいれば、回線を使用しているMVNOも利用可能になるのです。
通話品質についても、これと同じことが言えます。同じ回線を使い、同じ設備を利用している以上、回線の質も大手キャリアとMVNOで変わるところはありません。
通話の音質が上がるVoLTEについても、同様のことです。同じキャリアの回線を使っているならば、VoLTEにも対応しているので、通話品質が上がってくれます。
つまり、少なくとも回線という面から見ると、格安SIMの通話品質が劣っているということはありません。むしろ、大手キャリアと同レベルのものが提供されていると言っていいでしょう。
格安通話も品質はほぼ変わらない
MVNOの中には、専用のアプリを使うことで、通話料金を抑えられるサービスを提供しているところがあります。このサービスが「プレフィックス通話」と呼ばれるものなら、通話品質は下がりません。
通話料金を抑えられる「プレフィックス通話」
MVNOの場合、一般的な通話は大手キャリアの回線を利用していますので、利用料金は大手キャリアに準じたものになります。具体的には30秒20円です。
これは、一般的な通話の場合、料金は大手キャリアに直接支払う形になっているからです。大手キャリアのかけ放題サービスを利用できないMVNOは、大手キャリアの通常レベルにならざるを得ないのです。
これに対して、IIJmioの「みおふぉん」など、MVNOの中には「プレフィックス通話」によって通話料金を抑えるサービスオプションを用意しているところがあります。
プレフィックス通話とは、通話の電波をダイレクトに大手キャリアの回線に流すのではなく、一度MVNO側で引き取ってから、改めて大手キャリアの回線に流すというものです。
MVNOも大手キャリアに通話料金を払っていますが、30秒当たりの料金は20円ではなく、その10分の1である2円前後だといわれています。
プレフィックス通話によってMVNO側がユーザーから電話代を取っても、差額があるので商売として成り立ちます。これによって、格安通話を提供できるというわけですね。
電話回線を使っている点では変わらない
ただ、間にMVNOの設備を挟んでいようがいまいが、通話をするために利用しているのは大手キャリアの回線であることに変わりはありません。
料金の支払先は異なりますが、大手キャリアの施設を使って通話内容を届けるというプロセスそのものは、一般的な通話もプレフィックス通話も同じなのです。
一般的な通話のところでも説明しましたが、大手キャリアはMVNO用に劣った設備を用意しているなどということはなく、自社回線もMVNOの回線も全く同じ設備を使っています。
つまり、通話品質に関しては、つながりやすさについても、音質面についても、大手キャリアとほぼ変わるところはないと考えていいでしょう。
IP電話利用サービスは品質低下の可能性あり
一方、格安通話についてはIP電話を使っているMVNOもあります。こちらはネットの接続状況によって、通話品質がダウンするということも考えられます。
IP電話はネットを利用している
IP電話を利用しているサービスとしては、イオンモバイルの「050かけ放題」などが挙げられます。なぜIP電話を利用しているのかというと、電話用回線を使っていないからです。
一般的な通話を行う場合、NTTの交換局を通る必要があります。施設を利用するからには料金を支払う必要が生じ、利用料金が高くなると考えれば、分かりやすいのではないでしょうか。
これに対して、IP電話は電話回線ではなく、ネット回線を利用しています。このため、NTTの交換局を通る必要がなく、料金支払いの必要がないので、かけ放題サービスにぴったりというわけです。
ピンとこないという人は、LINEの通話を思い浮かべると分かりやすいでしょう。LINEの通話はネット回線を利用しており、NTTの交換局を通っていません。
これを電話に使っているのが、IP電話と考えれば分かりやすいでしょう。LINEの通話は料金がかかりませんし、IP電話についても似たようなものだと考えればいいでしょう。
ネットの品質が悪ければ通話の品質も落ちる
問題は、一般的な通話品質については大手キャリアによって保証されていますが、IP電話は大手キャリアの電話回線を使わないので、質が保証されていないということです。
そもそもIP電話については、音質が良くないという指摘をよく見かけます。これは音声通話の回線には音声通話用のデータしかないのに対し、ネット回線はそういうわけではないからです。
動画を見るためのデータも流れていれば、SNSに画像などをアップするためのデータも流れています。音声に特化したものほどの質は、確保しづらいのが実際のところです。
そして、音声通話用の回線の場合、通話中はその帯域をずっと確保しています。ところがネット回線はこれがないため、混雑する時間帯になると通話がうまくいかなくなるケースもあります。
特にMVNOは大手キャリアから回線を借りているためリソースが大きいとはいえず、昼間などは通信速度が低下しやすいです。これは、通話品質の悪化につながります。
MVNOは通話品質が悪いと言われているのは、このIP電話が原因の可能性が高いです。一般的な通話回線を使っている限り、こうした問題は起こらないからです。